2003年4月


文芸特殊研究1(第二回)

前回は学生で溢れかえっていた教室だが、今日は選抜試験の合格者のみの出席者なので、学生の数も落ち着いた。ちなみに、選抜された33名、全員が出席した。本日、湯山先生はいらっしゃらず新井先生のみ。自己紹介がてら、それぞれの学生に自分が会って話を聞きたい人物・表現者に関してもを語ってもらう。文芸学科の開講科目であっても、多学科であるデザイン・映画・放送・写真・演劇・音楽などの学生も選抜試験に合格してきているので、彼らが関心を持っている人物は一様ではない。選抜試験の作文で、ある程度自分をプレゼンできたはずの彼らだけあって、それぞれの学生からきちんとした個性を感じた。

 個々の学生から、会って話を聞いてみたい人物を具体的に聞き出すと、新井先生は、どのような角度から話を聞いてみたいかという点を生徒に問い質す。そういった人物に会って話を聞くコネも面識もない時にはどういったアプローチなら、その目標を達成できそうか、という点まで先生は時に学生に尋ねられることもあった。

 また、先生が実際にサム・シェパードにインタビューした時の体験談を学生にもされた。インタビューのためのアプローチ方法のユニークな例として、大統領候補だった人物の家に火をつけ、家の中から命からがら逃げてきた本人にインタビューを決行したという過激なアメリカのジャーナリストのエピソードなども語られた。もちろん、そのジャーナリストは逮捕され、監獄入りしているということだが。
授業風景
 またインタビュー時に、記録用としてテープレコーダーを使用するか、使用しないかということが話題に上ったときは、トルーマン・カポーティーが『冷血』書いたさいの取材方法を例として挙げられた。カポーティーは、テープレコーダーをインタビューのさいには使わなかったという。『冷血』は実際の連続殺人犯の犯人の道筋を追って書かれたものである。インタビュー取材は殺された被害者の家族に対するものが主であった。そこにテープレコーダーを持ち込むと、取材慣れしていない家族を緊張させるし、それによって聞き出せる話の幅がせばまってしまう可能性がある。そういったことを考慮したカポーティーはテープレコーダーなどの録音機材を持ち込まず、あくまで自分の記憶に頼って取材を続けたという。そうやって、あの長編力作『冷血』ができたのである。あのノンフィクション小説の描写のリアルさというところに感じ入っていた僕にとっては、カポーティーの取材方法を聞いて少なからず驚いたのだった。

 また、新井先生の体験からも録音機材を持ちこまない時に、インタビューする相手の話を聞き漏らさず、ポイントをきちんと自分の中に記憶しておこうとするのは独特のいい緊張感をもたらしてくれる時があるそうである。

結論としては、録音機材を持ちこむ場合と持ち込まない場合の両方を学生には試してもらって、自分にあった方法をそれぞれで模索してほしいということであった。 

もう一点、今日の授業で新井先生が強調されていたのはインタビューも一期一会なので、それぞれの機会を大切にしてほしい、ということだった。少なくとも、インタビューに臨む場合、相手が表現者の場合ならば、その人の代表的な作品を読んだり見たりしておく。取材のため必要な資料や作品などに目を通さずに、準備不足のままインタビューに臨んで、表面的な話に終始したならば、インタビューされる側の人間の貴重な時間を奪うことになる。また、同じ人間のインタビューにもう一度応じたいという気持ちにもならないはずである。やはり、そういった意味ではインタビューは一回一回にそれぞれ真剣勝負で臨まなければならない、ということを今日の授業を通して学生も理解したのではないかと思うのだ。(2003.4.24)


ジャーナリズム論2(第二回)

カメラのセッティングのために授業開始5分くらい前に教室に行くと、もう学生がずいぶん来ていて、三脚を置くためのスペースが余裕を持って取れなかった。初回よりも学生の人数が増えた感じである。とうとう学生は廊下にあふれ出し、全員を教室に入れるために中の学生に移動をお願いしなければならなかった。
授業風景
印象に残った「旅」について、学生を指名して語らせることが本日の授業のメインであった。学生に一通り語らせたあとで、新井先生がもう一段話を掘り下げるために質問をする。しかし、その質問の仕方は、こういう答えを引き出してやろう、という感じではなく、あくまでそこに興味があるから尋ねているんだ、という印象を与えるものだった。だからこそ、学生も質問によって緊張したりすることなく、素直に語ることができるのだと僕は感じた。

参加学生の「旅」をめぐるエピソードは予想していたよりもずっと多様で興味深いものだった。

小説の数行を抜き出し、その作家が旅した場所を追体験するために、為替レートさえ確認せずに海外まで足を伸ばした学生。

幼いときに、東南アジアに家族旅行し、カルチャー・ショックで体調を崩したときに、地元の呪術士に白魔術をかけてもらった後、体が軽くなって回復したという体験をした学生。

国内を自転車旅行の途中、海を見晴らす断崖絶壁の道路を走行中、転倒し、ガードレール脇の茂みに引っかかったおかげで、海の藻屑にならなかったという危機一髪の体験をした学生。

旅行中、カメラをひっさげて森の中を歩いていた写真学科の学生。彼は、偶然、日本シカに遭遇し、シカがまるで彼に向かって振り返りむいたかのような瞬間があった。それをとらえて彼はシャッターを切ることができた。その瞬間の興奮について語る学生。

そういった形で、海外、国内どちらもバランスよく多様なエピソードが披露された。まったく旅行した経験がない、といった学生はいなかった。誰しもそれなりの語るべきエピソードを持っているようだった。授業風景
僕の場合は、1995年、語学学校の日程がすべて終わってから日本に帰国する前に、ニューオリンズ、ニューヨーク、サンフランシスコなどを旅行した。旅の目的はジャズだった。ジャズの発祥地・ニューオリンズ、発展の地ニューヨーク、西の拠点サンフランシスコと行った具合だ。中でもニューヨークの有名なライヴハウス「Village Vanguard」でジャッキー・マクリーンと短い間だけれど、個人的に話をして最後に握手してもらったのは嬉しかった。

ところで、僕が学部生だった頃より、アジア旅行を経験している学生は圧倒的に多いという印象を持った。4・5年前から、さまざまなメディアがそういった流行を形成したということは言えると思う。確かに、アジア旅行に関する情報は飛躍的にここ数年で増えた。旅に対する学生の価値観も多様化したと思う。昔の学生は、旅といえばパック旅行が主流だった気がする。しかし、今は旧来型の旅行代理店の不振からもわかるように、国内で航空券と宿泊先などをアレンジして後は現地に赴いて自分で考えながら行動すると行ったスタイルが主流だろう。そういった意味では、今は旅のスタイル自体も必然的に多様化しているので、学生に体験を語らせてもさまざまな答えが返ってくるのは当然かもしれない。それだからこそ、こういった「旅」をテーマにした授業に学生が強い興味を抱いてやってくるのもうなずけるのである。(2003.4.24)


リズムの発見

0020.JPG有明スポーツセンターのプールへ行く。プールは幸運にもがらがらであった。

前回は平泳ぎがメインだったが、今日はクロールで10往復することを自分にノルマとして課した。平泳ぎは何も考えなくともリラックスした状態で泳げるがクロールはちょっと苦しく感じるし、体力の消耗が激しい。というのは、ゆったりとしたフォームでリズムよくクロールする技術が自分にないからだ。

あまり泳ぐことに対して意識的に考えたりしたことはなかった。振り返ってみれば、泳ぐときには友人と一緒に遊びがてらに泳ぐことが多かったし、さもなければ小・中学校の授業内に集団で泳いだくらいのものだった。これまで自分の泳ぎやフォームについて個人的にゆっくりと反省したり考えたりする機会をほとんど持ってこなかったということに気がついた。今日は一人で泳ぎに行ったので、いろいろ考えたり、工夫したりしながら落ち着いて泳ぐことができた。

泳いでいる人の中に、とても綺麗でゆったりとしたフォームで泳いでいる男性がいたので観察した。頭の中に、イメージを描きながらまねして泳いでみる。僕の場合、クロールで振りかぶるときに左手が水からしっかりと出ている時と出ていない時のムラがあることがわかった。また、リズムが著しく悪いせいで自分の呼吸が苦しくなっていることもわかった。それで、どういうリズムが自分に合っているのだろうか、ということを試行錯誤してみると、だいたい4拍子でクロールのリズムを取ると楽に泳げることがわかった。これは平泳ぎの時も一緒だった。ジョギングしている時は、呼吸のリズムを常に考えて走っているが、泳いでいるさいにはまったく考えたことがなかった。今さらながらの、小さな発見であった。

50分かけてクロールで10往復した。ただ、左右の手のバランスの悪さ、左手の水をかく力の弱さを矯正するにはかなり時間がかかりそうだ。


文芸特殊研究1(第一回)

 ジャーナリズム論2を終えてすぐに、駆け足に湯山玲子先生と初顔合わせをする。湯山先生は、元『ぴあ』の編集者で『SWITCH』などへの寄稿や、映画パンフの編集、『ヴォーグ・ニッポン』での“おんなひとり寿司” といった名物連載、クラブ・マガジン『LOVE PA !! 』『フロアー』元編集長として業界では知られている。

 授業開始時間が迫っていたので簡単な挨拶をした程度で、ほとんど時間をおかず、新井先生とご一緒に教室へご案内する。文芸特殊研究では新井先生と湯山先生が共同ホストになって、いろいろなゲストを招いて話を聴いていく形式を取るそうである。この授業も「ジャーナリズム論2」同様、教室は学生でいっぱいである。

 しかし、このクラスは授業を通して本格的な雑誌を最終的には制作するというプロジェクトが予定されている。さすがに100人全員で雑誌を作るわけにはいかないし、収拾がつかなくなる可能性が高い。またきめの細かいケアができないかもしれない、という事情から、学生を30人前後に絞ろうという打ち合わせが授業開始前にあった。

 授業概要と数人のゲストについて触れた後、すぐ受講者選考の話になった。立ち見の学生のために椅子を見つけて座らせるとそれぞれの学生に400字詰め原稿用紙2枚ずつを配布した。「これから受講者の選考試験を行います。黒板に書かれたテーマについて、800字以内で書いて下さい。タイムリミットは4時まで。選考の後、発表は本日6時を予定しています」新井先生が宣言し、湯山先生が黒板に「あなたがあって話を聞いてみたい人物とその理由を述べなさい」と課題を板書し、作文による選考試験が始まった。開始時間は午後3時ちょっと前なので試験時間は約1時間。教室にいた学生は最低でも80人。選考の結果受講できるのは30人前後という話を先生方がされたので、半分以上の学生がパスできないことになる。学生も必死だ。
 選考風景

その間、ビデオ・カメラなどを片づける。僕と同じ時間帯には他のTAが複数勤務しているので、必要とあれば強力を仰いでいいという話を助手の山下先生がされていたのを思い出す。いずれにせよ、僕は留学予定で後期は大学の業務に携われない予定である。二時間連続の授業補助でもあるし、後期のことを考えれば他のTAの誰かに引き継ぎがてらに手伝ってもらった方がいいという判断をして、コンピュータールームにいたTAの松下君に声をかけると、快く引き受けてくれた。

タイム・リミットの15分前に教室に行く。4時までにほとんどの学生が2枚の400字詰め原稿用紙を文字でびっしりと埋めて提出した。松下君と一緒に原稿を持って先生方の控え室へ。積み上げられた学生の作文を前に、選考作業が開始された。さすがお二人とも、現役編集長と元編集長である。ものすごい早読みで、学生の原稿を読んでいく。まず簡単に○(合格)×(不合格)△(ボーダーライン)に分ける。その後、新井先生と湯山先生がボーダーラインの原稿について意見交換とディスカッション。だいたい20数名がこの段階で決定。その後、敗者復活戦として×原稿に目を通して、いくつかピック・アップ。約一時間経過した時点で、新井先生はハワイへこれから出張のため空港に向かわねばならないということで選考会場を後にした。その後は、湯山先生から意見を求められたので松下君と僕も原稿を読み、感想や意見を述べた。ぎりぎりのボーダーラインの学生選びに議論が白熱して、6時発表の予定を過ぎてしまった。掲示板の前に集まっていた学生には発表が遅れることを告げて選考を続ける。最終的に合格者として33名の学籍番号と名前を発表した。選ばれる学生も大変だが、選ぶ先生方も大変なのである。(2003.4.17)


ジャーナリズム論2(第一回)

Switch (Vol.19No.10)  江古田。日本大学芸術学部。新井敏記氏は本年度、芸術学部文芸学科の科目ジャーナリズム論2を担当される。新井先生は同大学芸術学部文芸学科の卒業生で、現在は雑誌『SWITCH』編集発行人として活躍されている。昨年、新井敏記氏には文芸学科で特別講座をお願いした。それが学生たちから大好評だったことから本年度より、文芸学科で週に一度教鞭をとってもらうよう大学側からお願いし、それが実現したという形だと思う。そのあたりの正確な経緯は一介の大学院生である僕にわかるはずもなく、想像の範囲内のことであるけれども。

新井先生の強みの一つは幅広い人脈であろう。この授業の担当講師として名を連ねているジャーナリストの赤羽紀元氏、写真評論家として有名な飯沢耕太郎氏はもちろんであるが、それだけではない。写真家の荒木経惟氏、作家の池澤夏樹氏、音楽家の佐野元春氏など、その一部を耳にしただけでも小さなジャンルに縛られない人脈が想像できるだろう。

ところで今回、そんな新井先生の授業に僕は大学のTA(ティーチング・アシスタント)として、授業補助という形で係わらせてもらうことになった。学科からの要請で、授業の様子をビデオで録画するのと出欠席確認などが今のところ主な仕事である。また、手持ちのデジタル・カメラで授業風景を撮影する。これは個人的な記録用である。撮影した写真をこういった形でウェブ上で公開することもあると思う。

いざ教室に行ってみると、ビデオ・カメラの三脚を立てる場所を探すのが大変なほど学生が集まっていた。最終的には立ち見プラス(椅子ではなく床の上への)座り見が出た。初日の授業で、まだ科目登録など終わっていない段階なので様子は今後幾分変わるだろうが、人気の授業の一つであることは間違いないようだ。
授業風景
新井先生は、まず今年の授業テーマである「旅」について、ご自分の見解を語られた。僕が学部生だった頃よりも、「旅」は学生にとって、より身近なテーマでありキーワードになっているように感じる。学生たちも自分にとっての「旅」はどんな意味を持つのだろうと思いながら先生の話を聴いていたはずだ。僕はふらっと着の身着のままという旅をしたことはなく、その代わり大学を休学して一年間アメリカに留学した。大学院時代のワシントン州立大学への一年間の交換留学生時代も含めて、考えようによっては長い旅と言えるのかもしれない、などと一瞬僕も考えたりした。

次に、「旅」というテーマに絡めて新井先生は、今後どのようなゲストをどういう観点で授業に招こうとしているかということを述べられた。それは、北極から南極を物理的に「旅」している人から、マンガから小説といった形で表現媒体を越境的に「旅」している人物にまで及んだ。(2003.4.17)


ビート・ジェネレーションの思い出

suitcase.JPG
ティーチング・アシスタントの新年度初出勤日だった。新任の非常勤講師の先生が多かったので初授業後の感想などをいろいろと聞いた。大学からの帰りのバスの中でもう一人のTAの学生と話していて、彼の同級生にビート・ジェネレーションの作家を研究している人間がいるという話が出た。また、大学の先生方に混じって飲んでいた時に、一人の先生が、僕のまったく知らなかった日本におけるビートニクの流れについてごく簡単に話してくれた。

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Swimming

Finally, I went swimming to Ariake Sport Center by bicycle today since I bought swim suit. I had' not swum almost for 2 years. I paid 300 yen at reception desk. The pool is 25 meter long. The water is warm enough. That was comfortable. I swam principally breaststroke and sometimes the crawl. I spent about one hour there. When I got back home, I was extremely worn out. However, that was good exercise to me, of course.


調べもののため国立国会図書館へ。有楽町駅で乗り換えるとき怒れる経済学者、慶應大学教授金子勝とすれ違った。ちょっとふらふらしていた。行きは図書館の周りの桜が咲いていて綺麗だな、などとのんびり思っていたが、帰りは雨に降られて地下鉄の駅まで走らねばならなかった。


ケチャップ

2001年の夏、スイス人の友人の結婚パーティーに出席した翌日のことだ。宿泊したホテルはドイツとスイスの国境にあるボーデン湖の湖畔であった。湖沿いに行くとドイツに行けると言うことなので、自転車をレンタルしてパートナーと一緒にドイツを目指してペダルを踏んだ。気持ちのいい、晴れた日で、サイクリング・コースもよく整えられていて快適だった。一時間くらいかけると国境を越えてドイツに入ることができた。

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